女性の就職支援の課題とは
出産前に仕事をしていた女性の約7割が、出産を機会に退職しています。しかしそうして離職した母親であっても再び仕事に就きたいと考えている人は、少なくありません。
たとえば末子の年齢が0~3歳の母親の場合、働いている人が3割強働いていない人が7割弱ですが、働いていない人の4人に1人が働きたいという希望を持っています。
下の子が4~6歳では働いている人、働いていない人が半分半分程度ですが働いていない人の5人に1人が、働きたいと思っているという調査結果もあります。
潜在的には働く希望を持っていながら、実際には子育てや家事などのために仕事に就くことをあきらめている母親は少なくないのです。
わが国ではすでに人口減少社会に突入し、今後それが加速していくと予測されています。単に人口が減るだけでなく15歳未満の若い世代が著しく減少し、65歳以上の高齢者が増加するのです。
それに伴い労働力人口が減っていきます。労働人口の減少は経済成長にとって大きなマイナスとなるだけでなく、世代間扶養である年金・医療・介護といった社会制度が崩壊するのです。
そうした事態を回避するためには人口減少は避けられないにしても、せめて労働力人口の大幅な減少を食い止めなければなりません。
そのためには高齢者や若者、そして女性の就業支援に取り組む必要があります。その際女性の就業支援に関しては仕事と子育ての両立支援が重要な課題となるのです。
保育士不足の原因とは
保育所に子供を預かってもらいながら、就労している人たちも多くいます。働いていない母親であっても就業希望を持つ人は少なくなく、労働力人口の減少が就業支援を加速させ、新しい少子化対策が女性の就労と結婚・出産・子育ての両立支援を強く推進し、この両立支援のために保育サービスや子育て支援サービスの大幅な拡充が求められているところです。
こうした要因に後押しされ保育所がさらに整備され、保育所志向がますます高まっていくものと考えられています。労働力人口の増加のために、保育所の整備が進んでいくのは大変にいいことなのですが、そこで働くスタッフつまり保育士は、保育所の整備が進んでいく中でどんな位置づけになっているのでしょうか。
子供を持っている母親の働き方が多様化していることで、保育の充実が進められてきています。
サービス業や医療・介護などの仕事に従事し休日や夜間も働いている保護者のために休日や祝日、夜間などに保育を実施したり保護者の労働時間の長時間化などに対応するために、11時間の開所時間を超えて保育を実施したり、子供が病気の時に保護者が仕事を休むことができないなどの理由で自宅での看病が困難な場合に、病院や保育所などで病児を一時的に預かったりと、子育て支援の観点から選ばれる保育所を目指して、利用者寄りのサービスの充実が進んでいます。
そこで働く保育士たちもこれらのサービスに合わせて働かなくてはならないようになってくるのです。保育時間が長くなったり、休日や祝日が勤務になったりとサービスを充実させればさせるほど保育の勤務がきつくなってくるという実態が出てくるのです。
そのため保育士になろうという人が少なくなってきて、保育所の施設は充実しているのだがそこで働く保育士が少ない、保育士不足になっている保育所も少なくはありません。
私立の保育園での保育士不足が深刻
慢性的な保育士不足により保護者が望む保育サービスを提供できない保育所も数多くあるのです。共働きの家庭は増えてきていて保育のニーズはますます増大してきますが、スタッフがいなければどうにもなりません。
保護者の多様な働き方によって自分の勤務体系も変えていかなければならない保育士なのですが、収入面ではどうなのでしょうか。保育園には公立の保育園と私立の保育園があるのですが、公立の場合運営主体が自治体となりますので、そこで働く保育士は公務員となりますから給与体系は、公務員に準じた体系となります。
日本にたくさんある私立の保育園の場合、その保育園が給与を決めてしまいますので、自分の働きに見合った給料という職場は大変に少ないようです。
神澤光朗氏は「公立の保育園でも私立の保育園でも最初の給与は同程度ですが、勤務が長くなるにつれて官民の給与の格差が出てきます。そのため私立の保育園で働くスタッフは、勤務のきつさと給与の少なさが原因となって保育士をやめていく人も多くいるのです。これらがますます保育士不足に拍車をかけることになってしまいます。」と警鐘を鳴らしています。
家族形態が変化してきたのも、保育所を盛んに利用する側面を後押ししているのです。おじいさん、おばあさんがいる三世代世帯が減少してしまい、核家族世帯が増えてきているのが原因になっています。
祖父母に子育てをサポートしてもらえる家庭が少なくなってきているということです。核家族の家庭の母親が働く場合、保育所に頼らざるを得なくなってしまいます。このように家族形態の変化、女性の就労、子育て支援などで保育所は充実したサービスを提供しなければいけませんが、それに合わせて保育士不足の現状もよく考えなければならない課題となっているのです。
[PR] 神澤光朗最終更新日 2025年6月10日